AIRHEART Official Blog

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メーカーやパラグライダーの最新情報をお届けします。

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PHI FANTASIAに乗ってみた


PHIからリリースされたLo-AカテゴリーのFANTASIA(ファンタジア)。これまでPHIのエントリーモデルと言えばSONATAでしたが、それよりもさらに扱いやすいモデルとして開発され、PHIでは「万人の翼」と評しています。

今回、このFANTASIAをPikaichi Checkです!!

テクニカルデータをチェックする

では、FANTASIAのテクニカルデータをチェックします。



今回試乗したのはサイズ22。レンジは75-95Kgですが、これに上限いっぱいの95Kgで乗ってみました。

Lo-Aと言うこともあってアスペクトは投影で3.45、実測で4.69と言う数値。見た目も「初級機だなぁ」と言う印象です。ちなみに、同じAクラスのSONATAは投影で3.42、実測で4.72と近い数値になっています。



エアインテイクは36セルでリーディングエッジ側にはナイロンロッドが装備されています。下面側は半円形状になっていて、写真のように広げた際に自立する構造になっています。そのため、ライズアップ時のインフィレーションを大いに楽にしています。
構造上の特徴として挙げられるのは、ラインにダイニーマを一切使用していないことでしょう。これはブレークコードに至るまですべてのラインに対してです。やはり、ダイニーマの特性である伸縮する問題による影響を排除したかったのだろうと思います。また、サスペンションレベルが3つ(アッパー、ミドル、ロワーの3段階)しかないことも大きな特徴となっています。これも、翼の形状を安定的に保つ意味で大きな役割を担っていると思われます。

乗ってみた

ウィングキッス朝霧テイクオフにFANTASIAを広げると、翼がとても小さく近く見えます。ライザーもシンプルな構造なので、ラインチェックも素早く行うことが出来るでしょう。パラグライダーを習得する講習生にとって、ライザーの構造が単純でラインチェックがしやすいと言うのは負担が少ないし、とても良い隠れた性能だと思います。



Aライザーは2つに分かれており、A1ライザーには赤に色付けされたテープが付けられています。ラインも同じく赤で統一されています。A2ライザーにはオレンジが(ラインは赤)、Bライザーは水色(ラインも同じ)、Cライザーは黒でラインは薄緑になっています。ライザーテープの太さも初級機らしい太さだと思います。

軽いライズアップに驚いた

FANTASIAは、これからパラグライダーを始めるための「1機目」を想定してデザインされているのですが、「ライズアップは手応えがあるのかな?」と勝手に想像していたら全然違っていました。
とにかく軽く上がってくるのです。



写真はあまりにも軽くて頼りない印象だったので、思わず
「ホントに上がってきてんの?」
と振り返っているシーンです。それほど軽いですね。さらに強調したいのは、ライズアップが勝手に頭上手前で止まること。最初は
「上がってこないのかな?」
と思い違いをして取りやめてしまったほどです。それほどイージーなライズアップ特性を持っています。



しっかりと頭上確認を行った後で、ゆっくりと荷重をかけて走り出せばテイクオフはとても簡単でした。

ゆったり、ゆっくり飛んでくれる

フライトしてまず感じたのは

とてもゆったりと、そしてゆっくり飛んでくれる

ということ。



最近のグライダーは、たとえエントリーモデルと言えども十分なパフォーマンスを持っていて、飛行速度もそれなりであることが多いのですが、このFANTASIAはとてもゆとりのある速度感とでも言いましょうか、本当にゆっくりと飛んでくれる印象でした。

それではブレークでの操作はどうか?

初級機らしく、大らかな特性と言うか、引けばしっかりと手応えのあるテンションを伝えてくれるフィーリング。動きも決してクイックではありませんが、引き始めからゆったりとその操作に追従してくれるような動きを見せます。十分にスキルのあるパイロットにとれば、その動きは「もたつき感」と捉えられるかもしれませんが、あくまでこのグライダーはエントリーモデルであり、グライダーの操縦を習得するための道具ですから、その観点で見れば十分反応は良いと言えると思います。

また、サーマルなどのリフトにはしっかり反応し、速度が遅いことも関係していると思いますが、簡単に上昇してくれます。上限に乗っているにもかかわらず、それほど良い条件とは言えない日に、そこそこ滞空出来たのは驚きでした。ただ、ブレークコードによる旋回操作などを行うことで、しっかりと沈下してくれますので、スクーリングなどの場面において講習生が降りられずにアタフタしてしまう・・・と言うことは避けられそうです。

A2ライザーによる翼端折りも軽く簡単に行えました。ただし、これはPHI全体に言えることですが、翼端折りライザーは真下に引き込むようにしてください。外側へ引くような操作ですと、しっかりと翼端を折ることが出来ません。



ランディングもとてもイージーです。元がゆっくりである上に、ブレークコードの操作範囲が広いので、最終アプローチでの速度管理はとても簡単でした。ハーフブレークを上手く使ってあげると狙った場所にかなりの精度で降り立つことが出来ます。ブレーク操作に関しては、かなり粘ってくれます。ですので、スクーリングにおいても、慌てることなく適切な操作を習得することができるでしょうし、誘導するインストラクターもFANTASIAを信頼して操作を指示していただければと思います。

総評

PHIのFANTASIAは、まさに

THE 初級機

と呼ぶにふさわしい性能を持っています。
初級機(特にエントリーモデルと言われるもの)には、パラグライダーをやったことのない人が乗るのですから、私たちのようなパイロットからは想像もできないようなことが起こるものです。それこそ、無茶な操作やあり得ない操作などは想定内でなければなりません。

FANTASIAは、おそらくそれらすべてが「想定内」であるだけでなく、それを懐深く見守りながら成長を手助けしてくれるもう一人の先生…と言ったところでしょうか?
スクールの校長先生には、ぜひ一度試していただきたいと思います。乗っていただければ、FANTASIAの一見地味ですが、懐の深さや寛容な性能を感じていただけると思います。


NIVIUK ICEPEAK EVOXに乗ってみた


NIVIUKから待望のCCCコンペティションモデルが正式にリリースされました。その名は


ICEPEAK EVOX(アイスピークエボックス)


ICEPEAKの名を冠してはいるものの、その仕上がりはICEPEAK史上最高の翼となりました。


今回、ようやく実機に乗ることができましたので、あくまで私個人の感想を紹介したいと思います。

意外におとなしい

日本に初めて入ってきたICEPEAK EVOXサイズ22。早速テイクオフで広げてみる。
平面アスペクト7.6のこの翼は、パッと見は意外におとなしい印象を受けました。





2ライナーのその翼は99セルと、このクラスにしては少なめのセル数になっています。NIVIUKテクノロジーTNTが採用されており、ニチロールがリーディングエッジからトレーディングエッジまでをしっかりカバー。より精密な翼形性に貢献しています。



ラインはA2本、A'1本、B3本の6本。Bライザーにはコントロール用のバーがついていて、この形状が使いやすい。(実際にとてもコントロールがしやすかった)

いざ!テイクオフ!!

今回は、4月13・14日にエアパークCOOで開催されるJPAナショナルリーグ第2戦「COOスプリングカップ」での実戦での感想です。前日、曇りながらも飛ぶ時間に恵まれましたので、そちらも併せて感想を紹介していきたいと思います。
どちらも装備重量は103kgです。



おとなしく見えると言ってもアスペクト7.6。綺麗に広げるのが良いのは当たり前です。大会前日はほぼ正面の風1-2m/sでリバースライズアップ。手ごたえはありますが、比較的軽く上がってくる印象でした。大会初日はやや北寄りでサイドの風。風下側が先行するかと心配しましたが、難なく真っすぐに上がってきました。ライズアップはハイアスペクト機に乗ったことのある方ならば何の問題もないかと思います。



全体的にがっしりした翼

空中に出てみると、まず非常に剛性のあるがっしりした翼に気づきます。ハイアスペクト機にありがちな「ぐにゃぐにゃ」したような感覚や動きは全くありません。直進安定性も良さそうです。特に大会前日は、曇り空での穏やかなコンディション。それでも気温減率が良いらしく、沖に出してもしっかりしたリフトがあって、この日は最高1,400mくらいまで上がったそうです。
サーマルセンタリングは、あまり深いバンクをかけない方が良い感じです。NIVIUKのグライダーは全体的にそんな印象を持っていますが、このICEPEAK EVOXも同じですね。しかし、非常に強い上昇で荒れたサーマルの場合は、やはりサーマルに弾かれたり翻弄されないように、ハイバンクでスピードをつけた旋回の方が良いと思います。




クロカンタスクに威力!サーマルサーチ効果!!

ICEPEAK EVOXのサーマルサーチ能力は素晴らしいと感じました。最近のグライダーならばそんなのは当たり前だと思いますが、敏感かつ的確な反応に早速助けられました。
大会初日はビッグコンディションになり、ナショナルリーグは横岡ゴールのクロカンタスク。実は私、個人的に北上タスクはこれまでことごとく降ってきたので、ルート上の情報が乏しくコースも出たとこ勝負でした。
しかも先に行くクセは直らず、なぜか単独行動になってしまいます。烏山を越えたあたりで低くなり気まずい状況になったのですが、策もなくただただグライダー任せで飛んでサーマルを引っ掛けながらなんとかゴールすることができました。「いやぁ、EVOXよありがとう!!」と言う感じでした。
この特性は、サーマルセンタリング中でも顕著です。サーマルが強くなると翼が前に走って食い込もうとします。さらに強い場合(大会当日は+8もあった)はさらに前に行こうとしますので、しっかりとコントロールしてください。



速度も十分かと・・・

ICEPEAK EVOXのスピードですが、しっかりと計測したわけではないので話半分に聞いてください。
普通に飛ぶ限りは、他のグライダーと遜色はありません。アクセルを踏めば今活躍しているグライダーたちと互角に闘えると思います。
アクセルは軽くはありませんが重くもないです。踏み応えがあっていいんじゃないでしょうか?コンペ機のアクセルってこんなものでしょう。
ただ、フルアクセルまで踏んでみましたが、大きく沈下することもなく、比較的フラットな特性で沈下が増えていく感じです。どこかから急に沈下が増すような感じは受けませんでした。

コントロールバーは使いやすい

Bライザーに取り付けられたコントロール用のバーですが、非常に持ちやすく使いやすかったです。クロカンタスクで長いトランジットもあったのですが、指に引っ掛けてコントロールができるので疲れません。今までは、ラピットリングを握ったり丸いボールを握ったりしていたのですが、やはり握力がなくなってきます。みんなバーに付け替えるわけですね。



乗りやすい翼だと思います

ICEPEAK EVOXは、CCCクラスのコンペティションマシーンでありながら、非常に乗りやすく扱いやすいグライダーになっていると思います。乗っている感覚は、アスペクトを感じないCクラスのようなフィーリングでした。しかし、やはりCCCはCCCです。大会当日の荒れた強いサーマルコンディションにおいては、やはりそこそこ翼は動きサーマルにも反応するのでコントロールが忙しいのは同じです。ですので、誰でも乗れるとは言えませんが、これまでに何機かコンペ機と言われるカテゴリーのグライダーに乗り、十分に経験を積んだ方ならば問題なく乗れると思います。
また、初めてCCCに乗る方ですが、少なくともDクラスを十分にコントロールできている方で、機体のい挙動やブレークコードのテンションなどから周囲の状況を察知できる方、または察知するように訓練している方。危険予知力が高く、危険を感じたならばそれに備えて抑えて飛べる方。このような方々ならば乗れるとは言いませんが、訓練しながら乗りこなしていけるのではないか?と思います。
ICEPEAK EVOXはコンペ機です。乗るには覚悟が必要です。



NIVIUKファン待望のCCC機ICEPEAK EVOXは、その期待を裏切らない仕上がりになっていると思います。
これからCCCをご検討される方は、選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?


PHI TENORをチェック!!


ようやく2機目のPikaichi Check!!です。

今回は、PHIのスタンダードBクラスである「TENOR(テノール)」です。

テクニカルデータをチェックする

では、TENORのテクニカルデータをチェックします。



今回乗ったのはTENOR 23です。メーカーサイズ表記ではLなんですけど、体重レンジは90-110Kgです。ど真ん中に当たる装備重量100Kgで乗ってみました。

平面アスペクトは5.14、投影アスペクトは3.67です。一応他の同クラスグライダーと比較してみると

GRADIENT GOLDEN5 平面アスペクト 5.34 投影アスペクト 3.88
NIVIUK HOOK5 平面アスペクト 5.3 投影アスペクトは記載なし
GINGLIDERS ATLAS2 平面アスペクト 5.21 投影アスペクト 3.86
NOVA ION5 平面アスペクト 5.16 投影アスペクト 3.52

などとなっており、NOVAのION5に近い数値になっていることがわかります。見た目も大人しい印象を受けます。



スーパーAクラスとしてセンセーショナルなデビューを果たしたシンフォニアと同じ翼形を持ちながらも、エアインテーク周りの構造はミニリブを採用することでセル数50ながらも100と同じ効果でリーディングエッジをより精密に成形しています。
単純にシンフォニアとテノールのデータ(Mサイズ)を比較すると、平面翼面積はシンフォニアが26㎡に対しテノールは24.98㎡。メーカーのサイズ表示はシンフォニアのMサイズが22、テノールのMサイズが21となっており、テノールが小さい設定になっています。このあたりはテノールの設計思想に基づいており、小型高翼面荷重でスピード性能を高めることを目的としているようです。

乗ってみた

冬の朝霧エリアで、大勢のパイロットとともにタスクを回りながらフィーリングを確かめてみました。
まず、ライズアップはとても軽く、Aライザーに軽くテンションを与えるだけでゆっくりと確実に頭上まで立ち上がってきます。風の強弱によっては少しの抑えは必要ですが、これは一般的なグライダーのテイクオフと同じ。
頭上のテノールを確認したのち、しっかりと荷重をかけて走りこめば簡単に離陸することができました。



コントロールはリニアな感触

空中で頭上を見上げてみると、両翼端側にリーディングエッジから外側へ向けて斜めに2本のラインが入っていて、この翼がテノールであることを主張しています。翼は堅く、しっかりとパイロットを支えてくれる安心感のある乗り心地。
やや強めのスティッキーなサーマルでセンタリングをしてみると、コントロールはダイレクト且つリニアな感じ。引き始めからすぐに反応し、引く量に合わせて旋回もタイトになっていく。操作するのが楽しいと思わせてくれるハンドリング。ただし、ダイレクトな反応を示すだけに引き過ぎはオーバーコントロールにつながってしまいます。サーマルセンタリングとは言えタイト過ぎる旋回は効率を悪くするだけ。引きこんでノーズが切れ込んでいくような旋回ではなく、少し外翼を抑え気味にしてしっかりと上昇を掴むようなセンタリングがテノールには合っている感じがしました。ゆったりとした旋回ながらバリオは甲高い音を奏でて高い上昇率を示してくれます。そんなソアリングがテノールの真骨頂と言えるのかもしれません。



スピード重視の設定

スタート時間を迎えたので天子方面へとトランジットを開始。アクセルは重すぎず軽すぎず、しっかりと踏み応えのある重さで、不意にアクセルを踏みぬいてしまうようなことはないでしょう。アクセルを踏んでいるときの安定感は抜群で、時折軽く翼が前に走ることもあるものの、特に何か操作をする必要は感じない。アクセル中は軽くCライザーを握ってテンションを与えておけば良い。
テノールのトリムスピードは一般的なBクラス機と遜色はなく、アクセルを踏み込んだ速度もCクラス機と互角だった。スピード重視の設計だということが実感!!
ハーフアクセルで巡行中でも近くにサーマルなどの上昇帯があれば、自然とテノールはそちらへ寄って行ってくれる。自由に飛ばせてあげるだけで、上昇をサーチしてくれるのはありがたい。沖出しからのリターンで、あわやランディングかというほど低くなってしまったものの、上昇をサーチしてくれる特性のおかげで何とか復活することができたのですが、その後のこなしが悪く、しばらく渋い局面で前山磨きをする羽目になってしまいました・・・。



じっくり2時間以上をフライトしてランディングアプローチに入る。ランディングも不安な挙動は全くなく、ブレーキングを多用したアプローチを行ったのですが、ここで改めて懐の深い寛容な翼であることが感じられました。



総評

テノールは、よりアクティブなコントロールが好きなパイロット、もしくはそのようなコントロールを身に着けたいパイロットにおすすめしたい。テノールに乗ることで、フライトにおける速度管理やブレークの引き代などをより細かく感じることができるでしょう。逆に、十分な性能を持ちながらも全般的にゆったりと飛べるようなグライダーを求めているパイロット(特にシニアのみなさん)にはシンフォニアをおすすめしたい。
それから、テノールにはウェイトレンジの中間から下限寄りで乗ったほうがより扱いやすい感じがしました。より機敏さを求める場合は中間から上限で乗ればよいでしょう。

ファイのグライダーは普通の見てくれながら、飛べば安全で1クラス上の性能を示してくれます。自分のフライトスタイルや目的に合わせたグライダー選びをする上で、ぜひテノールを候補の一つとしてほしいですね。


NIVIUK ARTIK5をチェック!!

不定期になりますが、このブログではAIR HEARTの取り扱い商品を藤野が実際に使ってみた感想を
Pikaichi Check!!
と題してお送りしたいと思います。

主にグライダーのインプレッションが中心になるかと思いますが、なるべく感じたままに書いていくつもりですので、お時間のある方は読んでみてください。

最初のお題はNIVIUKのCクラスで定評のある「ARTIK5」です。



テクニカルデータをチェックする

まずはテクニカルデータのチェックです。



最近ちょっと巨大化したPikaichiは、ARTIK5の26サイズ(90-110Kg)に装備重量101Kgで乗ってみました。

それを踏まえてデータを見ると、平面アスペクトは6.30、投影アスペクトが4.86です。最近のCクラスにおいてはノーマルな値かな?と思います。ちなみに

GRADIENTのASPEN6は平面アスペクト6.46、投影アスペクト4.99
NOVAのSECTORが平面アスペクト5.92、投影アスペクト4.37
GINのBONANZA2は平面アスペクト6.44、投影アスペクト4.92

ですから、NOVAのSECTORを除けば大きな違いはない…と言っても差し支えない値かな?と思います。

セル数は66セル。綺麗な作りになっていて、飛んでいる姿も美しいですね。やはり美しいものはよく飛ぶのです。



エアインテーク周りの作りもSLE(Structured Leading Edge)によって精密に形成されています。



エアインテークはRAM(RAM Air Intake)によって、安定性に大きく貢献しています。



翼上面側に入っているバテン(チタン)は、ほぼ全体にわたって入っていると言ってもよいでしょう。写真の折ってあるあたりまでチタンが入っていますので、剛性の高い精密な翼形の形成が可能になっています。

乗ってみた

さて、前置きが長くなってしまいました。細かい能書きはともかくとして、本題は

「乗ってみてどうか!」

ということです。なので、その点について感じたままに書いてみたいと思います。

ライズアップはゆっくり

テイクオフに際してライズアップ特性はとても重要です。ARTIK5はアスペクトを感じさせないイージーなライズアップ特性を示しました。もちろん、風の状況やライザーの引き具合など、個々人のやり方によっては様々な感じ方があろうかと思いますが、私は基本的にどんなグライダーに乗ろうともライズアップのやり方は変わりません。軽くAライザーのラピットリングを持ち、左右の翼中央のラインを1本づつ指にかけて真ん中から上がるようにしています。

真ん中だけ上がるということもなく、一旦上がりだせば素早く空気がキャノピーに充填されながら、ゆっくりと頭上まで上がってきます。この時のAラインへのテンション次第では、上がりきらなかったり頭上を追い越したりする場合がありますので、どんな場合でも一定のテンションを加え続けることが大切です。

頭上まで来てしまえば、あとは荷重をかけて軽く走りこむだけでテイクオフは完了します。

ハンドリングは素直

ARTIK5のハンドリングは一言でいえば

「とても素直なハンドリング」

と言う印象です。ありきたりな表現ですが

「引けばすぐに反応して引いた分だけ曲がる」

と言う感じでしょうか?ただ、ブレークコードは引き始めは比較的軽く感じますが、引けば引くほどしっかりと重さを感じますので、むやみに引き過ぎて失速やスピンなどに入れてしまうようなリスクは少ないような気がします。個人的には好きなブレークのチューニングです。

センタリングも、引けばしっかりと曲がってくれるので上昇率に合わせて旋回のバンクを調整してあげればよいでしょう。この時、外翼のコントロールはしない方がよいと思いました。よほどの急な旋回以外は外翼が突っ込むような動きを見せないので、サーマル内では積極的に外翼のスピードを維持するためにもブレーキングとなる抑えは極力行わないほうが調子がよかったですね。
サーマルの強弱によって起こるピッチングによる外翼の突っ込み時のみ、軽く抑えてあげる程度がよいのかな?と思います。

巡行は軽くアクセルを踏んで

今時のグライダーはアクセルを少し踏んでいた方が滑空比が良いと言われますが、ARTIK5も例外ではありません。1/4くらいは常時踏んでいた方がスピードも乗ってよく飛びます。コントロールはCライザーに付いているハンドルで行います。この時、Cラインには常に軽くテンションを与えていた方が気分的にも安心感があります。この場合もピッチングを常にコントロールするのではなく、よほど前に突っ込みそうな挙動を感じた場合だけコントロールしたらよいでしょう。その方がスピードを生かした直線飛行ができ、よりARTIK5のパフォーマンスを引き出すことができます。これができない方は、直線飛行の練習を行うことをおすすめします。機体云々以前の問題で、あなたのコントロールや乗り方に問題がある可能性が大です。とはいえ、ARTIK5はとてもピッチ安定が良いので、それほど大きく揺れることは少ないと思いますが・・・。

フルアクセル時は、さすがにライザーコントロールの場面が増えます。が、それでも基本は同じで

「スピードを生かして極力ブレーキングしないこと」

が重要かと思います。

しかし、これは一朝一夕にできるものではないので、徐々に(例えばノーフレア飛びや、極力ブレークコードを使わない飛びなど)訓練していく必要があります。Cクラスのグライダーともなると、これまでスクールで教えてもらった常識的なコントロールではない方法論や理論があるものです。当然リスクも伴うことになるので、見様見真似で実施するのではなく、しっかりと訓練をして技術を身に着けてもらいたいと思います。

ランディングもコントロールしながら

アスペクトのあるグライダーは、ランディング間際になるとリフトを拾って降ろしにくくなってしまうことがあります。ARTIK5も例外ではなく、その持ち合わせたパフォーマンス故になかなか降りられないという場面も起こりえます。
そんな場合は、やはりしっかりと速度コントロールをしながら高さを調整し、アプローチコースとアングルを変化させられるだけの技術を持つべきです。むやみに左右に振ったりするのはエリアによってはスペースが足りずに危険な場合も多いです。
このクラスのグライダーに乗る方は、とにかくブレークコードの操作範囲を使いきれるだけの技量を持ってほしいですね。

「失速しそうだからこれ以上引けない」

と言っているような方は、まだCクラス機は無理だと思います。いつかヤバい日がくるかもしれません。そうならないように、己の技術をしっかりと磨いてください。

これらの技術がある方であれば、ARTIK5でランディングすることに何ら問題は発生しません。

総評

ARTIK5はCクラスでありながら、まるでBクラスのような安定性を持っているように感じます。若干のタービュレントな空域にいたとしても、ARTIK5はそれを緩和してパイロットに感じさせないような素振りをします。もちろん、経験のあるパイロットであれば、その状況をしっかりと感じ取ることができるでしょうが、この安定性がステップアップするパイロットには要注意な部分だと思います。安定して安全だから、それに任せてしまうような乗り方ができてしまうからです。

そのような乗り方は、ある程度ベテランのパイロットがDクラスやコンペ機から乗り換える場合には有効かと思いますが、ステップアップ中の発展途上パイロットには経験する機会を奪いかねません。逆に、それほど安定しているということです。

ステップアップするパイロットの方にアドバイスするとしたら

・とにかく常にブレークコードのテンションを感じるようにすること
・ライザーやラインのテンションを感じるようにすること
・グライダーの挙動(特にピッチ方向)を常に感じるようにすること

でしょうか。意識して乗らなければ、ARTIK5が安定性を確保しつつも懸命にパイロットに伝えようとしている情報を見逃してしまうことになってしまいます。幸い、ARTIK5はとても懐の深いグライダーなので、安心してその訓練を行うことができるでしょう。

インプレッションをしておいてこんなことを言うのは反則なのですが

「グライダー性能は最終的にはパイロットに依存する」

とPikaichiは思います。私がどんなに素晴らしいインプレを行っても、乗り手次第と言うことです。ですので、こんな風に乗ってほしいという思いは書かせてもらいました。あとは、あなたがARTIK5をどれだけ自分のものにする(手なずける)ことができるかではないでしょうか?

とにかく、性能や安全性についてARTIK5は申し分ありません。あとは

「乗り手がこれをどう使うか?」

が一番重要なことではないか?と思う次第です。